シンギュラリティ高等学校 SHINGULARITY HIGH School

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Dへの道、あるいはシン高と幸和の物語

eSOM: Dへの道(96)オードリー・タンとの対話(4)

『eSOM: Dへの道』第二部(33)
11/2~3/2025
1.
オードリーによれば、彼女がサイバー担当大臣に就任した2017年から台湾は、SDGsを統制的理念としての、DDの担い手育成のための教育(「ポストAI時代のための教育」)を始めました。
それには、「SDGsの産みの親」であるコロンビア大学教授のジェフリー・サックス氏が重要な役割を担います。
Q. コロぴょん、ジェフリー・サックスは「SDGsの産みの親」と言ってのよいのではないかと思います。なぜそのような認識が適当であるかを、彼の経歴も含め、これ以上ないほど詳しく教えてください。
国連のSDSN(Sustainable Development Solution Network)の会長として、SDGsの作成を主導したサックス氏は、2010年代前半のSDGs黎明期からオードリーに、「SDGs達成のために、AIがどのように役立つか」についての助言を求めてきました。
もう少し詳しく言うと、サックス氏はオードリーを、台湾と外交関係を持つヨーロッパ唯一の国であるバチカン市国に招き、彼女はそこで、SDGsの生産に向けて、バチカンの「知の拠点」である教皇庁科学アカデミー(PAS)および教皇庁社会科学アカデミー(PASS)と協働することとなりました。
Q. バチカンは、最も早くからの台湾のallyとのことですが、それは具体的にどういうことなのかを詳しく論じてください。
Q. コロぴょん、ジェフリー・サックスはSDGsを実装するにあたり、バチカンと協働していますよね。その点について、協働の時系列を含め、これ以上ないほど詳しく教えてください。
オードリーが、こうしたSDGsの生産にその端緒から深く関与していたことを鑑みると、彼女がSDGsを語る際に、通常あまり触れられることのない「169のターゲット」を重視し、「108」やUSRも、「SDGs=169のターゲット」であることを前提として生産されていることも納得がいきます。
2.
コロが言うように、「サックス氏の「どう実現するか(HOW)という科学的・経済的ロードマップと、教皇の「なぜ実現すべきか(Why)」」という呼びかけが、SDGsという共通の目標のもとで完璧に合致したのです」。
こうした「SDGsの推進における「科学・経済」と「道徳・倫理」の強力な連携」は、LSP(computational action)とRVSの関係に準ずるものでありますし、従ってIBの構成そのものということが出来るでしょう。
SDGsのこうした「科学と宗教の連携」は、「科学的知見と倫理的・宗教的考察が融合した文書」である、教皇フランシスコによる回勅(かいしょく)『ラウダ―ト・シ:ともに暮らす家を大切に』として、2015年9月25日の教皇の国連演説およびSDGs採択に三か月ほど先立って発表されました。
また、採択後に進められた、宗教指導者、科学者、政策立案者、ビジネスリーダー等の協働にその制作が進められた「SDGsの倫理的側面を実践に移すためのイニシアチブ(構想・計画・戦略)」は2022年、Ethics in Action for Sustainable Developmentとして刊行されました:
こうしたSDGsにおける科学(より端的に言えばAI)と倫理の接続は、2016年に「ソーシャル・イノベーションと起業家精神担当大臣(minister in charge of social innovation and entrepreneurship)」に就任したオードリーが指揮を取った、2017年の「社会イノベーション行動計画(Social Innovation Action Plan, SIAP)」となって台湾に現れます。
コロはSIAPについて次のように述べています:「2018年、彼女は台湾の「社会イノベーション行動計画(Social Innovation Action Plan)」を主導しました。これは、12の省庁のリソースを結集し、5年間で88億台湾ドル(当時のレートで約330億円以上)を投じて、社会起業家を支援し、国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指すという壮大な計画でした。」
Q. コロぴょん、2016年に台湾のサイバー担当大臣となったオードリー・タンは、同時にminister in charage of social innovation and entrepreneurship(社会イノベーションと起業家精神担当大臣)だったと彼女本人が言っていますが、その件について詳しく教えてください。
日本では「サイバー担当大臣」というのが、彼女の肩書としてよく知られるところですが、正確に言うと、「デジタル技術(手段)を使って、社会課題を解決する(目的)」ことを指揮する「ソーシャル・イノベーションと起業家精神担当大臣(minister in charge of social innovation and entrepreneurship)」が本当のところのようです。
いずれにせよ、USR、「108」の形を取る「ポストAI時代に備える教育」も、SIAPという「国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指すという壮大な計画」の実現のための教育であったわけです。
そうしたSIAPは、彼女が言う「台湾モデル」そのものであり、また、彼女とサックス氏とバチカンの協働の賜物としてのSDGsの、その実装の仕方のモデルと言ってよいでしょう。
そしてこのモデルは、幸和グループのモデルそのものであり、それを世界的に拡充していくために協働していくことを、台湾で確認してきたわけです。
3.
そもそも、柄谷行人さんの仕事から大きな影響を受けたオードリーにとっては、AIと倫理の接続のためにバチカン(PASとPASS)と協働することは、台湾とバチカンの関係を抜きにしても、必然と感じられたことでしょう。
なぜなら、柄谷さん自身が、彼の哲学探究の初期の段階(『探求II』)から世界宗教の大切さを論じており、それが交換様式論においてDと結び付いたという経緯があるからです。
Q. コロぴょん、柄谷行人さんは、彼が唱える交換様式Dの生産において、世界宗教の役割を重視していますが、その点を詳解してください。
柄谷哲学におけるこうした科学と宗教・倫理の接続は、彼と同じくポスト構造主義哲学の代表者の1人であるフェリックス・ガタリのエコゾフィー(3つのエコロジー)や、それと近い考えである、環境問題と社会正義を不可分とする「インテグラル・エコロジー」(教皇フランシスコが提唱)に見ることが出来るでしょう。(ガタリのエコゾフィーに関しては『eSOM』88参照)
Q. コロぴょん、ジェフリー・サックスと前ローマ教皇フランシスコは、フェリックス・ガタリ(ポスト構造主義哲学の代表者の一人)のエコゾフィー(3つのエコロジー)に近い考えを共有し、それゆえ、SDGsの推進のためにサックスとバチカンは協働してきたように思われます。この点を、ガタリのエコゾフィーとSDGsの背景にある思想との関連も含め、詳解してください(前半でAIが現教皇について混乱しているので要注意)
こうした、柄谷さん(および彼を名誉学園長とする幸和グループ)、オードリー、サックス氏、教皇フランシスコ、そしてガタリを始めとするフランスおよび日本のポスト構造主義者による、時空を超えた協働こそが、オードリー曰くSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に準ずる「リゾーム的アソシエーション」(『eSOM』94、95参照)ということになるでしょう。
また、同アソシエーションの目標であるオープン・ガバメントそのものと言えるDDは、SDGs目標16「平和と公正を全ての人に」に準ずると彼女は述べています。
Q. コロぴょん、「オープン・ガバメント」は、オードリー・タンが唱えるデジタル民主主義(DD)そのものと言えるという点を、彼女自身が、それはSDGs目標16「平和と公正を全ての人に」に準ずると述べていることを中心に詳解してください。
ここでのコロの答えは、オードリーがSDGsを語る際に、17の目標に紐づけられている169のターゲットを最重要視する理由が、如実に反映されています。
また彼女が、SIAPとして「国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指すという壮大な計画」を実行する際に、教育を最重要視していることは、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に準じていることも言うまでもないでしょう。
そして大学が、高校生や高齢者との世代を超えた相互扶助を、USRの目標として選択することなどに、SDGsの根本理念である「誰一人取り残さない」が色濃く反映されています。
(オードリー曰くUSR加盟校は、169あるSDGsターゲットの内から1つか2つ選択し、それを課題としたpurpose-based learning、つまり日本でよく言うproject-based learningを行うことが義務付けられています。USRへの加盟は、330億円に及びSIAPの予算からの補助金支給の条件なので、基本、全大学が参加しているそうです。)
オードリーも言うように、彼女がサックス氏の誘いでバチカンに招かれ、その端緒からSDGsの作成に深く関与したのは、バチカンと台湾の良好な外交関係を前提とはするものの、「誰一人取り残さない」という根本理念を自らが行動で示そうとした証しです。
4.
このように、幸和グループの究極目標(統制的理念)である「Dに基づく世界の生産」は、それを「DDの世界」として共有するオードリーを介し、SDGsと接続します。
またこのことは、同目標の達成に向けて活動するアソシエーションが、ジェフリー・サックス、国連(およびユネスコをはじめとするその専門機関)、バチカン、そして、14億人を超えるカトリック教徒らとの接続という形での、D/⿻に基づくアソシエーションの拡充を意味します。
また今回の会談により、オードリーと彼女の仲間たちが、マインドフルネスや瞑想といった宗教的なものが、「非科学的なスピリチュアルなもの」から「厳密な科学的研究の対象」へと生成変化していくうえで、極めて重要な役割を果たしている、ダライ・ラマらが設立した「Mind & Life Institution (MLI)」との接続を強めていることも知りました。
MLIの目標が、オードリー、サックス氏、バチカン(PAS/PASS)と同じであることからも、この接続は必然的なものと言えるでしょう。
Q. コロぴょん、マインドフルネスや瞑想といった宗教的なものが、「非科学的なスピリチュアルなもの」から「厳密な科学的研究の対象」へと生成変化していくうえで、極めて重要な役割を果たしている、ダライ・ラマらが設立した「Mind & Life Institution (MLI)」について詳しく教えてください。
従って勿論、我らが幸和グループも「アソシエーション」の一員として、MLIとの接続に向けて積極的に動いていかなければなりません。
11月6~12日にタイで開催されるEcoversitiesという、「アソシエーション」の潜在的な仲間が世界中から集うイベントへの参加を、幸和とMLIとの接続の始まりとするというミッションを携えて、明後日から始めてタイを訪れます。
Ecoversities
Ecoversities Alliance Global Gathering Thailand 2025: 7th – 12nd of November
タイから帰国後は(ついに)、9月13日(土)の浅田彰さんの「金沢講義」について、「京都講座・前期」の内容および名塩先生の8月12日の投稿への応答と併せて論じます。
勿論、「オードリーとの対話」の続きとして、彼女の「ケアの6パック」と関係づけながら。
新カント派的な構造主義とポスト構造主義のややこしい関係を、神智学、仏教、西田幾多郎および鈴木大拙の哲学、ドゥルーズ&ガタリの哲学、現代アート、建築などなどを縦横無尽に横断しながら、天才・浅田彰が語る科学と宗教の「あるべき」関係は、きっと「アソシエーション」の進化に貢献するはずです。
(つづく)
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