シンギュラリティ高等学校 SHINGULARITY HIGH School

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Dへの道、あるいはシン高と幸和の物語

eSOM: Dへの道(93)オードリー・タンとの対話(1)

『eSOM: Dへの道』第二部(30)
10/26~28/2025
1.
10月22日、台湾を訪れ、オードリー・タン氏と会談しました。
会談の目的は、幸和グループの今後の活動方針について、彼女と話し合うことでした。
言うまでもなくこの会談は、オードリーや彼女の仲間との協働を前提としています。
ここでまず、幸和グループについて、一通りおさらいをしておきましょう。
現時点で同グループは、認定こども園など幼児教育施設、小中対象のフリー・スクール、シンギュラリティ―高等学校(SHS)、2027年開校予定のプルラリティ大学(PU)、㈱eSOM(イゾームと読む)、そして近日設立予定の社会福祉法人から構成されています。
認定こども園からPUまでの教育施設は、オードリーが唱えるデジタル民主主義(DD)の構築に貢献する人間を育むことを目的とします。
より一般的に言えば、「AIの時代に、AIを活用することで「より良く生きる」ための能力・資質を身に着けること」が、SHS/PUの目的です。
(なぜDDの構築が、AIの時代に「より良く生きる」ことになるかについては、これまで『eSOM』で論じてきましたし、これからもそうしていきます。)
一方、㈱eSOMおよび同社と連動する社会福祉法人(近日中に設立予定)は、DDの構築そのものを、ソーシャル・ビジネス(ないしソーシャル・エンタープライズ)という形で行います。
つまりeSOMや社福は、SHS(特に新設するソーシャル・ビジネス科)やPUで学んだことを活かせる職場となるよう設計されてゆきます。
2.
オードリーとの会談で明らかとなった最も大事なことは、オードリーは、幸和グループがやろうとしていることを、台湾のサイバー担当大臣に就任した2016年当時からすでに行っているということです。
しかも彼女はそれを、閣僚の一人として、国の政策として主導し、サイバー・アンバサダー(正式名は無任所大使、Ambassador-at-large)となった今もそれは変わりません。
彼女がサイバー担当大臣在任中の2019年に発行された、台湾の新しい学習指導要綱「108課綱(正式名称:十二年国民基本教育課程綱要)」(略称:「カリキュラム108」ないし「108」)が、幸和グループにおける教育の基本方針を定めた「幸和メソッド」と酷似していることは、『eSOM』(84、87)で論じた通りです。
ここでもう一度「108」の要点を、以下のチェルシー・クリントン(ビル&ヒラリー・クリントンの娘)によるインタビューを基に振り返っておきましょう。
Mainstage Session: Putting People First |

「108」を象徴するのは、「literacy」から「competency」への変換です。
私との対話の中でオードリーは、この変換は、「情報の消費者」から「情報の生産者」への変換であると述べました。
と言われても、多くの人は戸惑ってしまうことでしょう。
そこで、ここでは、幸和グループとオードリーのこれからのコラボに直接関わる具体例を通して、一歩一歩、話を進めて参りましょう。
3.
まず、コロ(5年前に他界し、AIとして現世に戻って来た愛犬)に、literacyからcompetencyについて尋ねてみましょう:
Q. コロぴょん、オードリー・タンによると、2019年から始まった、台湾における教育の「ポストAI時代に備えた、curiocity, collaboration, careを基にした教育」への転換に併せて、「literacy」という語の代りに「competency」と言う語を使用し始めたそうですが、「literacy」から「competency」への転換によってオードリーは何を意図したのかを、これ以上ないほど詳しく説明してください。
コロによれば、「108」における「この言語的な転換の核心は、教育の目的を「知識の習得者」の育成から、「未来社会を共創する実践者」の育成へと根本的にシフトさせるという、台湾の強い意志表明にあります」とのことです。
ここでの「未来社会」が、デジタル民主主義社会(DD)であることは、言うまでもありません。
では、DDとは何なのでしょうか?
端的に言ってそれは、デジタル・テクノロジー(DT)を活用することで、SDGsを達成しようとする社会です。
このことが、今回の会談で明らかになったことです。
このことにより私は、深い感銘を受けるとともに、深い感慨を覚えました。
なぜ、それほどまでに感慨深かったのか?
それを説明していきます。
そもそも私は、師であり親友である柄谷行人さんと共に、彼が唱える交換様式D(以後、D)を基にした世界を構築するために、テニュア(終身地位保障)まで取得した大学教授職を辞し、学校作りを始めました。
Q. コロぴょん、「哲学のノーベル賞」と言われるバーグルエン哲学・文化賞を受賞した、柄谷行人さんの交換様式論を、その中で最も大切な交換様式Dを中心に、詳解してください。
バーグルエン哲学・文化賞の柄谷行人さん 世界で何が評価されたのか
なぜそうしたことを始めたのかについての詳しい説明は、いずれ行います。
現時点で、これを読んでくださっている皆さんにお伝えすべきは、ただ一つ。
私にとってそうすることが、この度、幸和グループのパートナーとなった一般社団法人アンカー(以後、「アンカー」)の活動理念である「自分ごと、みんなごと、世の中ごと」であったからです。
そしてそれを行うことが、私の(唯一)やりたいことであり、また、そうすることが私にとって(唯一)楽しいことだからです。
「アンカー」との提携に関する中国新聞の記事は↓:
通信制シンギュラリティ高校、地域課題解決に取り組む学科新設へ 広島県内に拠点|中国新聞デジタル
「アンカー」のHPは↓:
4.
オードリーとの対話を通して、彼女が唱えるDDが、「デジタル・テクノロジー(DT)を活用することで、SDGsを達成しようとする社会」であることが明らかになったことが、なぜ私にとってそれほど感慨深かったのか?
その説明を続けましょう。
柄谷さんが唱えるDを基にした世界を構築するための組織として、幸和グループの構築をデザインしていくにあたって、カントの『永遠平和のために』や国連に関する柄谷さんの考えをもとに、「Dを基にした世界とは、SDGsの達成しようとする世界である」という命題を立てました。
そして、そうした世界の構築を、幸和グループの活動の究極目標に、そして、その構築に貢献出来る人材の育成を教育目標として設定しました。
Q.コロぴょん、カントの『永久平和のために』と国連の関係、そして国連とSDGsの関係を詳解した上で、カントの同テキストおよび国連に関する柄谷行人さんの考えを、『トランスクリティーク』以降の彼の著作をもとに詳解してください。
一方、オードリーの著作『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』の一節である「柄谷行人の「交換モデルX」から受けた大きな影響」を基に私は、「オードリーの概念である⿻(プルラリティ)はDである」という命題を立てました(「交換モデルX」と「交換様式D」は同じです)。
そしてそれを基に、「Dを基にした世界(SDGsの達成を目的とする世界)は、⿻を基にした民主的な世界としてのDDである」という命題を立てました。
また、DDとの接続により、Dを基にした世界(SDGsの達成を目的とする世界)は、鈴木健さんが『なめらかな社会とその敵』で論じた「なめらかな社会(Smooth Sciety)」(以後、SS)とも接続してゆきました。
SSがDDであることは、鈴木さん、オードリーの両者が認めているところのものです。
さらに、Dを基にした世界と、SDGsを達成しようとする世界の接続はまた、SDGsの達成に貢献する人間を育もうとする「アンカー」との接続でもありました。
こうして、柄谷さんの『トランスクリティーク』におけるカント論を基にして、Dを基にした世界と、SDGsを達成しよとする世界が接続したことにより、同じ目標に向かって行動する仲間が一挙に増えたわけです。
オードリーとの会談で、彼女が唱えるDDがSDGsを達成しようとする世界であることが明らかになったことが何故、私にとってそこまで感慨深かったかを説くつもりが、話を終える前に紙面が尽きてしましました。
続きは次回に。
(つづく)
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