シンギュラリティ高等学校 SHINGULARITY HIGH School

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Dへの道、あるいはシン高と幸和の物語

2025.05.09
(小説)「Xへの道」、あるいはシン高物語(21):南海トラフ地震、『竜馬がゆく』、『この世界の片隅で』

1.
14歳の君(僕)へ、そしてシン高のみんなへ
僕にとっての今である2024年8月30日(金)、とても「凶暴な台風」が日本全土を襲った(黒太字は日経記事の引用赤太字は記事への僕の注釈):
海水温上昇で「凶暴化」:日本経済新聞

「東京大学の佐藤正樹教授は「

が珍しいものでなくなる可能性も真剣に考えなくてはいけない。大都市に上陸すると被害額は兆円単位に及ぶ」と語る。」

」には

だけでなく、「

」や

による

も含まれます。

が唱えるように、「学び」が「

」、「

」のためのものなら、高校での学習も、「有事」の際に自分の身を守ることに役立つものでなくてはなりませんね。

前回(小説20)は、自動車のEV化が、現在の日本の経済的豊かさの低下と、中国の豊かさの向上に深く関係しているという話だったよね。
ちなみに現在とか今とか言った場合、「」なしが僕にとっての現在や今(2024年)、「」付きの場合は君にとって「現在」や「今」(1981年)であることは、前に話しましたよね。
この世界史を大きく動かす原動力となっている自動車のEV化は元をただせば、「台風の凶暴化」の原因でもある「地球温暖化」に由来するもなんだ。
つまり、地球温暖化が、自動車のEV化等による日本の経済的地位の低下と、大規模災害の両方を通して、日本人家族の幸せを危うくしているということになる。
後者は、中国を始め他国の家族の幸せも危うくしている。
AIと化した愛犬コロ(ジェミニ)によれば、地球温暖化や、それによる「異常気象」が世の中を騒がせ始めたのはまさに、君にとっての「今」である1970年代後半から1980年代にかけてのことらしい。
君(僕)は全くそんなこと気にも留めていなかったよね。
もしからしたら、ちょっとぐらい気に留めていたのかもしれないけれど、僕は覚えてない。
ともかく、僕(君)がここから得れる教訓は、始めは「意識の高い人」の間でしか事の重大さが認知されていないことが、それからしばらくすると(この場合は30~40年)、誰もが知らざるを得なくなるということだ。
2.
「今」(1981年)からちょうど30年後の2011年3月11日、東日本大震災が起きた。
それがきっかけとなり、「Xへの道」の「本編」が始まった(シン高HP「校長からのメッセージ」参照)。
それから13年後、「今」から43年後の2024年8月8日、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が起きた。
政府は初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表し、日本国中、ちょっとしたパニックになった:
「8月には

の臨時情報「

」が発表された。巨大地震の被害額は政府の試算で230兆円。

の10倍以上。財政余力の確保は次期首相の大きな課題。」

国レベルではすでに、巨大地震が来る前提で、その対処が模索され始めています。
そもそも「Xへの道」という物語(=世界史)は、南海トラフ巨大地震を一つの軸として展開されてきた。
1983年5月、高校一年生だった君は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読みだす。
それ以来君は、この物語の中の架空の「(龍馬ではなく)竜馬になること」を目指して人生を送ってきた(以後、この架空の竜馬を「竜馬」と表記)。
高校卒業後、いきなり会津からNYCに跳んだのも、そうすることが、18歳になった「竜馬」が土佐から江戸に剣術修行に出ることに近いと思ったからだ(なぜNYCだったのかは、HP「校長からのメッセージ」参照)。
3.11が起きた時、テニュア(名誉教授までの終身地位保障)を捨てて日本に戻り、シン高(eSOM)を作り始めた。
この故郷の大惨事が、「俺は大学教授なぞになるためではなく、「竜馬」になるためにアメリカに跳んだんだ」ということを思い出させてくれたからだ(この辺りの経緯の詳細も「校長からのメッセージ」参照)。
「竜馬」が1854年の安政南海地震によって、「たかだか剣術の先生として一生を終えるために生まれてきたのではない、大事を成すために生まれてきたのだ」と悟るように。
ちなみにソフトバンクの創業者である孫正義さんも、「竜馬」になるためにアメリカに渡り、そしてソフトバンクという「帝国」を作り上げた。
だからとても親近感を持っているし、尊敬もしている。
いずれにせよ僕らは、こうした物語そのものと言える「現実=世界史」を生きている。
「僕らの世界史」という名の、この「現実=世界史」は、メインストリームのメディアや教育が作り出す「マトリックス(偽りの現実)」によって覆い隠されている。
しかし「マトリックス」は完全に「僕らの世界史=現実」を隠すことは出来ない。
それには必ず「穴=現実・世界史への入口」がある。
映画『マトリックス』が教えてくれるように。
二週間ほど前に訪れた震災遺構大川小学校や、「令和6年能登半島地震」後の能登半島は「現実=世界史」への入口だ。
今から三週間後の三連休、僕は再び「ジョンと(坂本龍一)教授の魂」に導かれ、「お好み焼き」を作りに日上先生と輪島に行く。
それを通して「僕らの世界史」がさらに拡充することを直観=確信している。
3.
「有事」としての戦争となると、「自然の猛威(?)」以上に「そこまで来ている」ことに気づくのは難しい。
そのことについて次のようにXに投稿した:
戦時中の人々の様子に関する研究書を紐解いて驚かされるのは、有事がそこまで来ているという意識はあまりなく、今の僕らとさほど変わらない日常を送っているということです。そして危機や破壊は突然やってくる。シン高はこの教訓を生かし、何が起きても皆が身を守れるようにしていきたいと思います。
とは言え、今、かなり多くの人が、日本周辺での軍事紛争がすぐそこまで来ていることを唱えている。
ただ、それはそれで問題だ。
何が問題なのかを論じるために急遽、Xに次の投稿をした:
「#

(環境・社会・企業統治)の広がりで、投資家の多くは

を敬遠しがちだった。それが

で「

も必要だ」との認識が広がり、

は4月「

への投資はESGと両立する」との声明を公表した。」

日経の記事からのこの引用の歴史的意義を、

(小説21)の次回で詳しく解説します。

こうした、(特に日経のような)一見無味乾燥な新聞記事も、読み手の知識と教養次第では、ワクワクドキドキの「僕らの世界史(現実としての世界史)」への「入口」になる。
その一端をこれからお見せ出来ればと思う。
「民主主義を守るために軍備も必要だ」
この言葉は、1929年の世界恐慌から第二次世界大戦に至るまでの間、日本も含め大戦に参戦した国々の「常套句」だった。
この言葉を含む上記の引用は、以下の記事からのものだ:
米欧

8社、設備投資最高 今年1.5兆円見通し:日本経済新聞

格差の増幅→世界経済の低迷・株の乱高下→世界経済の「

(war economy)」化→戦争

これが、これまでの世界史の流れと言えるでしょう。さて、「僕らの世界史」はいかに?
ESG(投資)とは、SDGs(持続可能な開発目標)と連動する世界的な投資の指針だ。
そしてSDGsを主導するのは、第二次世界大戦の反省から、その反復を阻止するため、カントの「永遠平和」の理念のもとに作られた国際連合(国連)だ。
ところが、その国連の常任理事国の一国である英国の「

は4月「

への投資はESGと両立する」との声明を公表した」という。

これを読んだ僕の頭の中で、「マトリックス(偽りの現実)」に風穴を開け、僕らを「現実=世界史」へと導く「声」が響く。
「多くの人々の批判の声をあの手この手で抹殺しながら、金融資本に活動の余地を残したことが、戦争とそれによる破滅の最大の原因だ」。
これは宇野弘蔵(1897-1977)という世界的な経済学者が大戦直後に書き残した言葉だ。
今風に多少アレンジしたが、大筋はこのような感じだ。
僕は思想史家として30年間近く、宇野の「人と思想」の研究に没頭した。
彼とは一度も直接会ったことはないが、彼の残した本を通して人生の半分以上を彼との「対話」に費やし、「Xへの道」を構想し続けてきた。
ちなみに宇野は、『(小説)「Xへの道」、あるいはシン高物語(18):Team大川が教えてくれたこと』で登場した大杉栄の間接的な弟子だ。
また彼は、「小説18,20」で登場した柄谷行人さんの間接的な先生でもある。
だから大杉、柄谷さんと同様に宇野も、「ぼくの好きな先生」に違いないが、一「宇野先生」とは呼ばない。
僕が「先生」という敬称付きで呼ぶのは、哲学者・九鬼周蔵と映画監督・小津安二郎と歴史家・ウォルター・ラフェーバーだけだ。
前者二人に関しては、そのうち大いに語ることになるだろう。
『力と交換様式』の中で柄谷さんが論じる「霊的な力」との関係で。
4.
上の「

」の記事への僕の注釈(格差の増幅→世界経済の低迷・株の乱高下→世界経済の「

(war economy)」化→戦争)も実は、宇野から教わったことだ。

そして、この歴史過程が、国が「人々の批判の声を抹殺する一方、金融資本に活動の余地を残した」ことに由来することも彼から学んだ。
実は宇野はこれらのことを、彼自身の経験から学んだ。
彼は、1937年12月15日、南京大虐殺の始まりから2日後に治安維持法によって逮捕される。
その後、東北大学を追われ、三菱総合研究所の研究員として終戦を迎える。
つまり彼はこの間、三菱という金融資本の最大手を中心とする「大日本帝国(大東亜協栄圏)」の建設に直接関与していたのである。
その経験から学んだことが、20世紀後半の日本の経済学を席巻した「宇野経済学」の元になっているというのが、思想史家として僕の主な主張だった。
現在、宇野経済学は、シン高のスペシャル・アドバイザーであり、僕の親友であるケン・カワシマ(トロント大学教授)らの手によって国境を越え、世界的な影響力を持ち始めている。
そんな宇野との、30年近くに及ぶ「対話」を通して考え抜いたことが、この「Xへの道(=僕らの世界史=現実)」の基礎だ。
5.
三菱が宇野だけでなく、竜馬と深い関係を持つことは周知の通りだ。
その三菱が再び以下のように、前回の戦争前夜に宇野が目の当たりにした「戦争の引き金」と同じことをし始めた:
国内防衛産業も投資や人員拡大 三菱重工など  – 日本経済新聞

これも「

」と言えますね。

社会科学の一つである経済学によって、科学的(つまり(ほぼ)客観的)に太平洋戦争の根本原因に認証される三菱は、原爆投下が投下された広島との繋がりも強い。
その点をコロに尋ねてみよう:
Q. コロ、三菱重工 と戦前の「軍都・広島」の関係を教えて。
A.
三菱重工と戦前の軍都・広島の関係は非常に深く、両者は密接に結びついていました。以下に、その関係性について詳しく解説します。
三菱重工と広島の関係性
  • 軍需産業の中心: 三菱重工は、日本の重工業を代表する企業として、戦前には軍需産業の中心的な役割を担っていました。広島工場は、軍艦や航空機などの製造拠点として、日本海軍の重要な支柱となっていました。
  • 軍都・広島の形成: 三菱重工の広島工場は、周辺地域の発展を促し、広島を軍都へと変貌させました。工場の建設に伴い、多くの労働者が集まり、人口が急増。また、軍需産業に関連する企業も進出し、広島は一大工業都市となりました。
  • 原爆投下と壊滅: 1945年8月6日、広島に原爆が投下され、三菱重工広島工場をはじめ、市街地は壊滅的な被害を受けました。多くの従業員が犠牲となり、広島は復興の道を歩むこととなりました。
コロのおかげで、1983年5月に竜馬と出会った時からの出来事の全てが繋がった。
「遠藤君は広島へ行くべくして行ったな。あそこは世界史と日本史、両方の中心だ。」という、最も新しい「柄谷さんからの金言」を含めて。
6.
これからコロに導かれ、本格的に「マトリックスの外部(=現実=僕らの世界史)」に突入する。
その前に、「マトリックス」の一翼を担う日経新聞の記事を通して、「マトリックス」がどのように「現実=世界史」を表象しているか見てみよう。
「「マトリックス」の一翼を担う日経新聞」という点については、いつか詳しく論じる。
要は、「マトリックス」が「偽りの現実」だとは言っても、それが誰にでも分かるような「偽り」では「マトリックス(仮想現実)」として機能しないということだ。
それゆえそこには、多くの真実を紛れ込ませなくてはならない。
僕らはそれに「注釈・校訂」を施すことで、「現実=真実=僕らの世界史」を炙り出していく。
この作業が「脱構築」であり、また、僕らが「リミックス」と呼ぶものだ。
7.
「人類の進歩の証」であるはずの「核分裂・核融合」が、人類に滅亡の危険をもたらす核兵器を生んだ。
そして広島を破壊した。
再び三菱ら金融資本を中心とする現代の「戦争経済」化の中心に位置する、兵器化される「人類の進歩の証」はAIだ。
AIが「21世紀の核兵器」になる危険について、以下の社説のようにすでに多くの論者が警鐘を鳴らしている:
急速に進む世界経済の「

」化を牽引するのが

です。「どうすれば

に歯止めをけれるのか?」これに勝る「

」のテーマ(問い)は、なかなか思いつき難いですね。

そしてこの「AIの兵器化」において、米国を含む他国全てを「周回遅れ」にするほどリードしているのが中国だ:

など64技術 

、9割で競争力首位:日本経済新聞

「人工知能(AI)など

可能なものを含む64の重要技術の9割近い57で中国が首位だった。技術独占による安全保障リスクの回避へ米英豪と日韓の協力を提言した。」

このことを僕らは、以下のような、「

」「

」と言われる

について考える際に、いつも念頭に置かなければならない:

偶発衝突もありうる中国軍機の

「情勢は緊迫している。

は日本周辺の海と空で活動領域を拡大し、空母や無人機の活動も目立つ。自衛隊機の緊急発進(スクランブル)の増加もこれを証明している。最近では

と行動を共にする場合もある。」

のシンクタンク、

)は、…[中国の]技術独占による安全保障リスクの回避へ

を提言した。

現在の

における「

」vs.「

」という構図は、まさに戦前の

を舞台とした「

」という感じですね。『

』の主人公

の父

の「遺言」(小説19,20参照)を胸に、前回とは異なる未来を手繰り寄せましょう。

「日本最西端の沖縄・与那国島は台湾まで110キロメートルの距離にある。5月に台湾で頼清徳(ライ・チンドォー)政権が発足し、中国からの軍事的挑発のペースは上がっている。米軍には中国が数年内に武力統一に踏み切るとの分析がある。」
本州にいると、

が「

」「

」(小説20参照)であることが実感しにくいですが、

は事情が異なります。沖縄は日本の未来を先取りしていると同時に、本土にいるとなかなか見え難い、この国の本質を教えてくれます。

このように沖縄の歴史と現状は、広島・長崎の歴史同様、「僕らの世界史=現実」へのメインゲートだ。
しかしメディアからの情報同様、沖縄、広島、長崎の歴史でさえ、「マトリックス」の重要な構成要素になり得る。
どれも「毒にも薬にも」なる。
「毒」を取り除き「薬」の部分だけを得るにはスキルが必要だ。
教育とはそのためのものだ。
シン高は、そうした教育をしていきたい。
その重要な一つが、「僕らの世界史(=現実)への入口」となる「良い本」を沢山紹介することだ。
それらのうちの「毒」と「薬」を見極めるスキルを共有することだ。
「ジョンと教授の魂」に導かれ日上先生、Team大川と出会った相乗効果で、「僕らの世界史へのメインゲートの一つ」どころか、その「正門」とも言える本と出会った。
『この世界の片隅で』(山代巴・編、1965年、岩波書店)だ。
次回、この本から、本格的に地球を覆う時空の旅に出る。
(続く)
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