シンギュラリティ高等学校 SHINGULARITY HIGH School

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Dへの道、あるいはシン高と幸和の物語

2025.05.09
eSOM: Dへの道(13)シン高在学中に成し遂げて欲しいこと、そして「ひろしまモビリティワールド」

1.
(『eSOM: Dへの道』(12)の続き)
では、「AIを自分の脳の一部として使いこなす」「バガボンド(探究学習者)になること」に必要な能力・資質とはなんでしょうか?
言うまでもなくそれは、AIに向けて「適切なプロンプト(指示)を作れる能力・資質」です。
適切なプロンプトを作成するにはまず、自分で課題を設定出来なければなりません。
それは、前回紹介した、私が幼稚園の園長時代のブログで書いたように、日本の公教育を受けた人間が最も苦手とすることです。
シン高はそれを得意にする人間を育むことを目標とします。
では、どうしたら自分自身の課題を自ら設定することが得意になるのでしょうか?
それにはまず、自分にとってのフロー(時間を忘れて没頭出来る状態)は何かを明らかにすることが必要です。
そしてそのためには、フローとはどのような状態を言うのかを理解しなければなりません。
シン高ではその「稽古(トレーニング)」を書道を通して行います。
次に行うべきことは何か?
実は、次に行うべきことが、自分の「脳の再構築」に関係するのですが、それは次回に譲ることにして、今回はその先に進むことにしましょう。
フローとはどのような状態かを理解したら、次に、自分が出来る限りフロー状態でいられる仕事は何かを探します。
それが人生を通しての自分のウェルビーイング(身体的、精神的、社会経済的に良好な状態)に繋がるからです。
シン高の目標は「個人と社会のウェルビーイング(SDGs)を達成出来る人間の育成」です。
それにはまず個人(自分自身)のウェルビーイングを達成されなければならず、そしてそのためには、自分のフローが、これからの時代(AIの時代)に必要とされる仕事と結び付けられれば良いのです。
AIの時代に社会で必要とされ、かつ、自分がフロー状態に入れる仕事を探すこと。
そんな仕事をこれからは、「フローな仕事」と呼ぶことにしましょう。
自分にとっての「フローな仕事」は何か?
これがシン高生全員にとって、まず最初に浮上すべき課題です。
これをAIをアシスタントとしながら、ファシリテーターと一緒に探究していきます。
それが或る程度見えてきたら、次に浮上すべき課題は、その「フローな仕事」に就くために、「何を成すべきか」を明らかにすることです。
この「第二の課題」で、卒業後の進路がある程度見えてくるはずです。
そして最後の「第三の課題」が、「第二の課題」を解決することで見えてきた「フローな仕事への道」をゆくために、「今、シン高在学中に何を成すべきか」ということになるはずです。
履修科目の決定や課外活動の選択が、その課題解決に当たるでしょう。
「第一の課題」から「第三の課題」までをおさらいしておきましょう:
第一の課題:AIの時代に必要とされる仕事で、自分のフローを充足するものは何か?
第二の課題:その仕事に就くために、成すべきことは何か?
第三の課題:第二の課題解決案に準じて、シン高在学中に成すべきことは何か?
このように順序だてて考えることを「コンピュテーショナル・シンキング」と言います。
それが、シン高在学中に習得して欲しい、最も大切なことです。
その「稽古」を、AIとファシリテーターという「師範」とともに行っていきます。
それがシン高です。
2.
「師範」としてのファシリテーターは、自分自身の「バガボンドへの道」を極めるために、だれよりも「稽古」に励まなければなりません。
となると、「ファシリテーターのファシリテーターとしての校長」である私は、生徒やファシリテーター全員のお手本となるよう、だれよりも稽古に励まなければならないことになります。
言うまでもなく、私にとってのフローとは、シン高を構築することであり、それがまた、「AIの時代に必要とされる仕事」であると自負しています。
その仕事を遂行するために「成すべきこと」(第二の課題)も、30年以上におよび学究生活として行ってきたつもりです。
また、「第三の課題」の解決として、学究時代の知識とスキルの蓄積をもとに、「国連によるAIの時代に適した教育の国際基準」構築に向けて、学者としての専門分野以外のことを学び直し、カリキュラムに落とし込んでいるところです。
しかし、これらのことは、ファシリテーターはともかく、シン高生が即座に親近感が持ったり、参考にするのは難しいように思います。
そこで考えました。
「シン高の構築」以外で、私がフローに入れるものがあと二つあります。
まず、AI×数学×物理学。
そもそも私が高校卒業後、いきなりNYCに跳んだのは、アインシュタインの後継者になるためで、大学での最初の専攻は数学でした。
シン高のSTEM教育担当顧問である石原正雄さんと話しているうちに、中学・高校時代に、学校の勉強そっちのけで数学や物理を独学で探究していた頃のフロー状態を思い出した。
一方のAIも、坂本龍一さんや浅田彰さんの影響で(「Dへの道」(9)、(10)、(11)参照)、高校の頃から並々ならぬ興味を抱いていました。
AIとの関係で二人が大絶賛していたリドリー・スコットの映画『ブレードランナー』(1982年)も、高三の春休みにわざわざ会津(福島)から池袋の文芸座(1997年閉館)まで観に行きました。
そうしたAIに関わる私のフローも、シーモア・パパートMIT教授(「Dへの道」(4)参照)の孫弟子にあたる石原さんとの対話を通して、再燃し始めました。
そうした経緯で、AI教育、そしてそれと密接に関わるSTEM教育が、シン高における共育の柱に据えられることになったわけです。
3.
とは言え、AI×数学×物理でフロー状態に入る高校生は、まだまだ限られていることでしょう。
シン高がそれをシン高生の諸君にとって、身近で楽しいことに出来ればと思っています。
そこでですが、実は私にはもう一つフローがあります。
前回「eSOM(12)」で話したカーレースです。
とは言え、日本中がF1に熱狂していたバブル経済期(1987~1991)ならともかく、今やカーレースはマイナースポーツです(嘗ても?)。
そういう私も、カーレースがフローになったのは、極々最近のことです。
幼稚園の園長業務とシン高の設立準備の「二刀流」で疲れ果てている時に突如「降ってき」ました。
きらびやかなネオンに照らされたラスベガス市街地を駆け抜けるF1マシンをぼーっと眺めている時に。
それ以来、シン高と幸和グループの構築のことに尽力している時以外はひたすら、ぼーっとFIをはじめとする世界中のカーレースを眺めています。
寝落ちの時も、地球の裏側で開催されているレースの爆音を聞きながらだと、一番良く眠れます。
すると翌朝起きた時には、頭が完全にリフレッシュされていて、フロー状態でシン高/幸和の構築に取り組めます。
土日も全く同じルーティンです。
私がシン高/幸和の構築に取り組んでいないのは、レース場に足を運んでいない週末と、お正月に箱根駅伝を観ている時だけです(私にとって箱根駅伝はカーレースと同じ作用があります)。
前回も書いたように私は、ある一流スポーツ専門誌に複数回に渡ってリクルートされるほど、世界中の色々なスポーツを観てきました(特に全米4大スポーツ、サッカー、テニス)。
特に野球に関しては、往年のカープのスター選手である栗原健太さんと、さしで打撃に関するマニアックな話をするほどです。
また、バスケに至っては、ドラゴンフライズのある幹部に、NBAに関して一からレクチャーしたこともあります。
そんな私ですが現在は、モータースポーツほど奥が深く、知れば知るほどのめり込んでいくスポーツはないと思っています。
そこで、ここで一念発起して、モータースポーツを自分の仕事の一部にしようと思い立ちました。
そうなると、モータースポーツに関して私は、シン高生とほぼ同じ立場になるわけで、それがこの決断の最大の要因の一つです。
私にはすでに、「シン高/幸和の構築」という大事な仕事がありますので、、それと関係し、かつ、これからのAIの時代に必要とされるモータースポーツ関係の仕事を探究するということになります。
これは「第二の課題」に該当するでしょうから、多くのシン高生よりちょっと先に行っているぐらいかと思われます。
「シン高/幸和の構築の一部となり、かつ、これからの時代に必要とされるモータースポーツ関連の仕事」。
これをシン高メンバー全員に協力してもらいながら、探究していければと思います。
この探究の過程をこの『eSOM:Dへの道』で実況し、シン高生の各々が「自分だけのレース」を戦っていくうえでの参考にしていただければと思う。
4.
この新たな「私のレース」を戦っていくうえで、前回も触れたマリーナホップ跡地に2027年春開業予定の、「世界に誇るモビリティー・エンターテイメントの「聖地」」を目指すという「ひろしまモビリティー・ワールド」が、一つの大きな鍵を握っていると直観しています。
シン高が「世界に誇るモビリティー・エンターテイメントの「聖地」」を目指す「ひろしまモビリティー・ワールド」の構築に関与していくことは、私がシン高生に、シン高在学中に成し遂げて欲しいことの全てを満たしています。
では、「シン高生に、シン高在学中に成し遂げて欲しいこと」とは一体なんでしょうか?
まずそれは、これからの時代に必要とされ(=成長が見込まれ)、かつ、自らのフローを充足する仕事を見つけることです。
今、手元に、世界有数のコンサルティング会社であるデロイト トーマツが著わした『価値循環の成長戦略 人口減少下に“個が輝く”日本の未来図 』(2024年)という本があります。
この本によると、「AIの時代」に成長が見込まれる産業は以下の7つ:
モビリティー: 「自動車大国」から「モビリティー大国」への転換を目指し、規制の壁を乗り越え、新たな市場を創出することを目指しています。
ヘルスケア: 健康寿命の最大化を図り、高齢者を含めた生活者一人一人が一日でも長く健康に生活を送れるようにすることを目指しています。
エネルギー: 多層的なエネルギーミックスの構築で世界をリードすることを目指します。
サーキュラーエコノミー: 資源の効率的・循環的な利用を図り、廃棄を最小限に抑えることを目指します。
観光: 地域特性を活かして国内外の関係人口との長期的な関係性を育むことを目指します。
メディア・エンターテイメント: グローバル展開を加速させるディストリビューターへの業態転換や、業界大連合でグローバル組織戦への挑戦などが挙げられています。
半導体: 日米連携を強化し、次世代半導体技術の習得・国内での確立を目指します。
「ひろしまモビリティ・ワールド」はこの7つのうち、なんと4つと深く関係しています。
どの4つかを、その理由とともに考えてみるのは、恰好の探究学習となるでしょう。
そしてそれら4つは、ESGを介してSDGsに結び付いているからこそ、デロイト トーマツはこれからの成長産業として挙げているのです。
ESG/SDGsについては、家庭科と社会科で学びます。
そこで得た知識をもとに、4つの成長産業がどのようにESG/SDGsと関連するかの理解しようとすることも、探究学習の課題として最適なものとなるでしょう。
このように、「ひろしまモビリティー・ワールド」の構築に関与することは、シン高の共育活動にとって、この上ない機会を提供します。
(続く)
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