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2024.12.24
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シン高正式誕生記念
遠藤校長、大いに語る!
去る2024年12月17日、シンギュラリティ高等学校(略称:シン高)の設定認可が、広島県私立学校審議会の諮問を経て、広島県知事に承認されました。これによりシン高は、広島県では実に14年ぶりとなる私立高校として正式に誕生しました。
シン高の正式誕生を記念し、遠藤克彦校長に、シン高をどんな高校にしていきたいかを存分に語っていただきました(聞き手:白石直也事務長)。
アメリカの大学のような高校に
Q.
いきなりですけど、一言で言って、どんな高校にしたいと思っていらっしゃるんですか?
A.
一言で言えば、僕がアメリカの大学で受けた教育の良いところを凝縮したような高校ですね。
僕は、勉強は嫌いではなかったけれど、小学校から高校まで、日本の学校が好きではありませんでした。
それでアメリカの大学に進学したのですが、アメリカの大学は日本の学校とは真逆で、僕にとってとても居心地が良かった。
それであれよあれよという間に博士号まで取得して、気づけば大学教授になっていました。
そのぐらい居心地がよかったわけですから、僕が経験したアメリカの大学の良いところ満載の高校を作れば、僕と同じで日本の学校が合わない人たちにとっても良い高校になるだろうなと思いまして。
自分の興味や関心に従って学ぶ
Q.
具体的に、アメリカの大学のどのようなところがよかったのでしょうか?
A.
まず自分の興味や関心に従い、自分が学びたいと思うことを学べるところですね。
よく、「こんなことを勉強して何の意味があるのか分からない」という疑問というか不満を耳にしますよね。
特に数学とか(笑)
実はこれから高校生になる人が生きる「第四次産業革命」の時代において、数学ほど役に立つ教科はないんですけどね。
ともかく、自分の興味や目標のために学ぶのであれば、そもそもそうした疑問がおこる余地ははないはずですよね。
「人生の目標」と「自分だけの道」
Q.
しかし、10代半ばぐらいだと、自分の興味や目標がなんなのか、まだはっきりしない人も多いと思います。その場合どうなるのでしょう?
A.
良い質問ですね。
シン高ではまず、先生ならぬファシリテーターと一緒に、自分の興味や関心を時間をかけて明らかしていきます。
シン高においては、通常の意味での「先生」の代わりに、生徒が主体的に学び、自分の道を切り拓いていくうえでのサポーターないし「伴走者」としての「ファシリテーター」がいます。
自分の興味・関心が明らかになったら、そこから自分の人生の目標と、そこに辿り着くための「人生の設計図=自分だけの道」を、ファシリテーターと共に作成します。
自分だけの「人生の目標」を決め、「その設計図=自分だけの道」を明らかにすること。
それが僕がシン高生にシン高在学中、一番望むことです。
そして自分の進むべき道がある程度決まったらようやく、そのために必要なことを学べるような科目選択を、ファシリテーターと一緒に決めていきます。
「AIとの共生社会」を知るための学び
Q.
自分の興味・関心に導かれた学びは、意欲を持って主体的に学べるという点では良いと思います。ただ、高校を卒業するためには、全員必ず取らなければならない必修科目があります。それさえも「自分だけの道」を行くための学びとなり得るのですか?
A.
そうです。
というのも、どんな道に進もうと、これらからやって来る未来において幸せを掴むために、理解しておかなければならないことがあります。
現在10代の人たちにとっての未来とは、AI(人口知能)が人間の知能を凌駕するシンギュラリティ前後の世界です。
つまり、AIと共生していかなければならない社会です。
従ってどのような道を選択しようと、その道は「AIとの共生社会」の中で切り拓いていかなければならない道です。
だからまず、この来たるべき未来社会について知らなければなりません。
全ての必修科目は、「AIとの共生社会」を知るために必要なものを得るための機会となり、「なんのために勉強するの?」という疑問がなくなるはずです。
AIの専門家と共にカリキュラム開発
Q.
科目としての「情報」はともかく、国語・数学・英語・理科・社会という必修科目を「AIとの共生社会の中で自分の道を進むために必要な学び」の機会とするというのは、具体的にどのように行われるのでしょうか?
A.
現在、そうした学びの機会として、必修科目の単位を取得できるようにするために、私をはじめ何人かのシン高の先生は、発足したばかりの日本シンギュラリティ学会の会員になるなどしながら、カリキュラム開発を行っています。
そもそも、シン高における各教科の単位取得は、レポートが中心となります。
それを最大限に利用した学びの機会にしようと思います。
例えば、「(ある教科の)教科書の○○頁から△△ページまでに書かれていることが、AIとの共生社会においてあなたが進みたいと思う道と、どのように関係するか?」といったテーマでレポートを書いてもらうことなどを考えています。
こうしたレポートを作成しようとする過程で、AIについてや、自分の将来について、一生懸命調べたり、頭をひねったりするはずです。
私は30年に及ぶ学究生活を通して、こうした試行錯誤の過程が、その後の人生に真に役立つことを学ぶうえでの最良の方法であることを知りました。
「自分だけの道」を探すための多様な授業
Q.
主要教科以外に、「AIとの共生社会について学び、そうした社会の中で自分の進むべき道を探し求めること」に役立つ科目には、どのようなものがありますか?
A.
まず、「総合的探求の時間」の一つとして、「AIとの共生社会について学び、その中で自分の進むべき道を探し求めること」自体を行う「シンギュラリティ学講座(仮称)」という科目が必修となる予定です。
また、AI云々を抜きにして、自分の興味・関心に直結する仕事を自分で創生し成功している人々の話を聞き、「自分だけの道」の探究の糧にすることで、卒業単位を取得出来る「地域創生人材育成講座」も必修となります。
アプリ開発しながら探求学習
Q.
テクノロジーを実際に使った授業も多いようですね。代表的なものにはどのような授業がありますか?
A.
自分と社会の両方にとって良いことを「ウェルビーイング」と言われますが、それをテクノロジーを活用して高めれるようになることが、シン高の最大の教育目標と言えます。
そのための授業としてはまず、グーグルとマサチューセッツ工科大学が共同開発した「MITアップインベータ―」というソフトを利用し、自分や自分の周りの人の役に立つアプリを開発する「デジタル人材になるために」という授業があります。
先日、私自身、実家の福島にいる母親の役に立つアプリを作ったのですが、それを作る過程で、自分の母も含め、お年寄りはどんなことで困ってるのだろうとか、社会がこんなふうになればいいのになどを考えたり調べたりすることで、単にアプリ開発の技術以上の大事なことを学べることに気づきました。
まさに、最も効果的な「探求 ✖ STEAM」学習です(注:STEAM = Science・科学, Technology・技術, Engineering・ものづくり, Art・芸術, Math・数学)。
仮想空間(メタバース)での授業も
Q.
メタバースを利用した授業もあるそうですね。
A.
メタバース、いわゆる仮想空間は、企業などでもどんどん活用されていますからね。
シン高では、どうしたらメタバースを使って自分と社会の両方にとってよいこと、つまりウェルビーイングを高めれるかの探求を、メタバース内で行う授業を選択することが出来ます。
そうすることで、「MITアップインベータ―」の場合と同様に、テクノロジーの利用の仕方を学びながら、テクノロジーを利用してどうウェルビーイングを高めれるかを探究することが出来ます。
これは、立命館大学のメタバース推進チームですでにそうしたことをやっていらっしゃる立命館大学助教の水瀬ゆずさんと彼(彼女?)のスタッフが担当してくださいます。
授業も部活も「ボトムアップ」
Q.
部活動にも力を入れていくそうですね。
A.
シン高は、授業と同じくらい部活動を重要視していきます。
すでに述べた通り、シン高が最も大事にすることは「本人の興味・関心の探求としての学び」なわけですが、それにに最も適しているのが部活動です。
似たような意味で、シン高のスペシャル・アドバイザーである金子嘉宏東京学芸大学教授も、遊びこそが最高の学びであり、それに最も適しているのが部活動であるとおっしゃっています。
部活動も授業同様、生徒主体の活動となります。
言い換えれば、シン高サッカー部監督である畑裕喜(ひろき)さんが推奨する「ボトムアップ理論」に基づく活動となります。
サッカー部は、他の部活の在り方の良いモデルとなるでしょう。
生徒主導で新しい部活動を
Q.
他にどのような部活動がありますか?
A.
サッカー部以外ですでに決まっているものでは、卓球部、ダンス部、eスポーツ部、メタバース部、美術部があります。
このうち卓球部などは、学校説明会に来た生徒さんからの要望がきっかけで設立されました。
このように新しい部の設立自体も、出来る限り生徒主導で行っていきたいと思います。
また私をはじめ、シン高の先生もすでに数名会員になっている日本シンギュラリティ学会の会長である笹埜健斗さんが実行委員長をされている「生成AI甲子園」出場に向けて、生成AI部を立ち上げるのもいいかなとも思っています。
大学進学のサポートも
Q.
生徒の中には大学への進学を志す人もいると思われます。そうした生徒へのサポートについてはどうですか?
A.
もちろん、自分の興味・関心を出発点として、ファシリテーターと一緒に探す「自分だけの道」に、大学進学が含まれるケースもあるでしょう。
ですので、「自分の道」にピッタリの大学を探すところから、その大学に進学するための準備までを、「大学進学コース」といった特別コースを設立するなどして、出来る限りのサポートを行っていきたいと思っています。
こうしたシン高卒業後の「道」に関しては、大学進学だけに限らず、様々な業種の若い起業家の方々のお話を直接聞ける機会などを作るなどして、最大限のサポートが出来たらと考えています。
充実した留学サポート
Q.
校長は高校卒業後すぐにアメリカに留学したわけですが、留学に関しては?
A.
もちろん留学に関しても、私自身の経験を踏まえて、他に真似のできないサポートを行っていきます。
なにせ私自身、留学生の立場と、アメリカの大学の教授として留学生を受け入れる立場の両方を経験していますからね。
実はすでに、私のロスアンゼルスにいる知り合いで、長年、学校探しからホームステイとのやり取りまで、短期長期両方の留学サポートを行ってきた方が、シン高生の留学希望者を特別にサポートしてくれることになっています。
御本人も高校から自らの意志でイタリアに留学し、その後、ずっと海外で生活されていている方なので、留学生が本当に必要とするきめ細かなサポートをしていただけます。
きちんとした留学プログラムなら、例え数週間でも、その後の人生が良い意味で一変するような経験が出来ることを僕は目の当たりにしてきました。
オンラインで国際交流も
Q.
オンラインで海外の高校生との交流を行う授業もあるそうですね。
A.
オンラインで世界中の若者と交流しながら英語力を磨くサポートを行っている会社と提携する予定です。
これまで繰り返し述べてきたように、シン高の教育目標は、「テクノロジーを活用し、ウェルビーイング(自分と社会両方によいこと)を高めれるようになる」です。
実はこの目標の前に、「国際的な視野を持ち」という枕詞が付きます。
テクノロジーの進化によりグローバル化もさらに加速度を増しますから、当然そうなります。
この提携先は、オンラインで交流した相手国を実際に訪問し、英語でSDGsについて探求するプログラムなども行っていますから、そちらの導入も検討していければと思っています。
英語が人生の宝
Q.
「国際的な視野を持ち、ウェルビーイングを高めれる人になること」が教育目標となると、英語が重要になりますよね。
A.
勿論そうなります。
私は自分の人生を振り返り、「英語でコミュニケーションが出来るようになったことが、人生で一番良かったこと」と断言出来ます。
「何がそんなに良かったのか」を語るために、別な機会を設けなければならないほど良かったです。
ただ、私がここで言う「英語でコミュニケーションが出来る」は、日本の英語教育からまだまだ遠いところにあります。
シン高では、私が言う意味での「英語でコミュニケーションが出来る」ようになるための英語教育を行っていければと思っています。
「没頭出来ること=楽しいこと」を見つけよう!
Q.
最後に、校長が、シン高にこようかどうか迷っている人も含め、未来のシン高生に一番伝えたいことをおっしゃてください。
A.
僕がシン高生に一番望むことは、シン高在学中から死ぬまで、幸せな人生を送るための「武器」を見つけることです。
その「武器」とは、HPの一番最初に書いてあるように、「時間が経つのも忘れて没頭出来るもの」、英語で言うところの「フロー」です。
自分が時間を忘れて没頭出来ること(フロー)を仕事に出来れば、それは楽しく幸せな人生となるでしょう。
ただ、ここで言う「フロー」には、現時点では多くの人にとって仕事に結びつかないものが含まれています。
例えば、推しのアイドルの応援。
これなどは、現在ある多くの仕事がAIに代替されていくなか、今後世界的に最も成長が見込まれる産業の一つである「グローバル・エンタメ産業」に繋がります。
このようにシン高は、「フロー」という「武器」とともに、楽しく幸せな人生のスタートを切れるよう最大限のサポートをしていきたいと考えています。
(終わり)